誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承 ─ ポジショニングで食べる喜びを伝えるPOTTプログラム ─

ポジショニングの基礎知識

ポジショニングの表記法

1)体幹角度(リクライニング位)

体幹角度は、矢状面で水平線を基準として何度体幹を前屈しているかを表す仰臥位はリクライニング位0度、水平線を基準として60度前屈(屈曲)しているとリクライニング位60度(体幹角度60度)と表す。体幹角度90度(座位)よりは、リクライニング位30度や60度の方が誤嚥を予防できる。リクライニング位は、食塊を食道への送り込みと喉頭閉鎖のタイミングを一致させて誤嚥を防ぐ体位とされている。また食塊の流入速度を遅くさせ、喉頭閉鎖遅延の代償とされていることがある。リクライニング30度は、患者自身で食事は目視できないため、必ず食事の介助が必要である。リクライニング位45度以上が自力摂取可能である。

2)頭部と頸部のポジショニング 

頭頸部を屈曲させるポジショニングは、原則として「頭頸部屈曲chin down」“軽度の屈曲”で、胸部とオトガイ部(下顎正中)が4横指程度の間隔が目安である。頸部正中位、体幹正中位で飲み込むのが安全である。麻痺などがある場合、首を横に向ける「頸部回旋head rotated」があるが、研究によると安易に頸部を回旋することは視覚確保が困難であり嚥下周囲筋の疲労を助長する危が指摘されている。適切なアセスメントからポジショニング位を導き出すことが重要であるが、原則的には、頸部を正中位に保持した上で、リクライニング位として体幹を傾斜することがよい。

3)注意点

嚥下障害の種類や程度によりリクライニング角度は異なる。安易な判断はせず、チームで相談して適切なポジショニングをきめて正確な手順で実施する。
ポジショニングの角度は正確であっても、食物や水分の性状や量、タイミングにより口や咽頭の処理能力を超え、ムセたり誤嚥することがあるので十分に注意が必要である。

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